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初音さんの二十日間
第5章 週末の爆弾
「こんなとこにカフェですか?雀荘の看板出てますけど」

怯える様子の柊二くん。

「うん、元ストリップ小屋なんだぜ」

「ストリップ……」

今にも崩壊しそうな小さな雑居ビルの階段を、私のあとから恐る恐るついてくる長い脚。そんな様子が可愛くて、ニヤニヤが止まらない。

手作り感いっぱいのドアを押すと、廃墟をうまくリノベーションしたおしゃれな空間が一望出来る。

ディナータイムのこの時間は店内の明かりがぐっと落とされ、キャンドルが揺らめく薄暗い雰囲気が大人っぽい。

ボロボロの漆喰の壁にガタガタと軋むイス。ソファーはふかふかしてるけど、平気で穴が開いていたりする。でもたまらなく居心地のいい大好きな場所だ。

「ふわー…都会ってすげぇ」

本日何回目だかの都会感嘆詞をつぶやく柊二くんを、先に到着していた夏希の席に引っ張っていく。

「お待たせー。さっき話した親戚の子」

「はじめまして。初音の同級生だった小池です。よろしく」

研修終わりでビジネススーツなのにどこか色っぽく見えるのは、ぐんと張った胸元とキュッとくびれたウエストと口許にあるホクロのせいだ。

「あ、一ノ瀬柊二です」

夏希の差し出した右手を握り返す柊二くんの顔を盗み見る。店の雰囲気になのか夏希になのか、高揚しているように見えて、またきたチクッとする感覚に慌てた。

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