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初音さんの二十日間
第7章 与ひょうの恋
外が薄暗くなっても柊二くんは帰ってこなかった。
「ごはん、作ろうかな」
ジャガイモの皮を向いても、玉ねぎを刻んでいても、頭の中で繰り返すスライドショー。
メガネの横顔。
派手な寝癖。
ふにゃっと崩れる笑顔と不適な微笑み。
どっちが年上なんだかわからないような気遣い。
都会にはしゃぐ子供っぷり。
実家がしんどいと潤んだ瞳。
やけにうまい料理の腕前。
残さず食べる旺盛な食欲。
何もかもが愛しくて。
これはさぁ。
こ、恋ってやつ?
なにやってんだろなぁ、いい大人なのに。あの子は10コも下の親戚なのに。なにか魔法にでもかかってしまったのだろうか。
ぼんやりと鍋をかき回しているところに、やっと鍵のあく音がして私は廊下ヘ走り出た。
「おかえりっ」
「あ、ただいまです」
長い脚をブーツから引っこ抜く間もスリッパに足を入れる瞬間も、うつむいたまま無言の様子に少しばかり不穏さを感じる。
突っ立ったままの私に気づいてようやく上げた視線も、すぐにまた足元に落ち「手、洗ってきます」と洗面所へ消えてしまった。
なんなんだ、あのぎこちない態度は。
「ごはん、作ろうかな」
ジャガイモの皮を向いても、玉ねぎを刻んでいても、頭の中で繰り返すスライドショー。
メガネの横顔。
派手な寝癖。
ふにゃっと崩れる笑顔と不適な微笑み。
どっちが年上なんだかわからないような気遣い。
都会にはしゃぐ子供っぷり。
実家がしんどいと潤んだ瞳。
やけにうまい料理の腕前。
残さず食べる旺盛な食欲。
何もかもが愛しくて。
これはさぁ。
こ、恋ってやつ?
なにやってんだろなぁ、いい大人なのに。あの子は10コも下の親戚なのに。なにか魔法にでもかかってしまったのだろうか。
ぼんやりと鍋をかき回しているところに、やっと鍵のあく音がして私は廊下ヘ走り出た。
「おかえりっ」
「あ、ただいまです」
長い脚をブーツから引っこ抜く間もスリッパに足を入れる瞬間も、うつむいたまま無言の様子に少しばかり不穏さを感じる。
突っ立ったままの私に気づいてようやく上げた視線も、すぐにまた足元に落ち「手、洗ってきます」と洗面所へ消えてしまった。
なんなんだ、あのぎこちない態度は。