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初音さんの二十日間
第8章 鬼の居ぬ間の
上の空だった気持ちをなんとか落ち着かせ、メタボ課長への禊ぎとして心ばかりの残業をし、帰り際に開発の部屋を覗いてみた。

山辺のデスクはきれいに片付き、同期の姿も見えなかった。もう発ったんだな。

トキメキがなくなっていても、やはり心配だった。

文化や価値観が違う国での仕事は、日本にいるときの数倍神経を使う…と言っていた。辛いもの苦手だしさ、と笑った顔を思い出して心がざわめく。

ロッカールームで、今日何度目だかわからない大きなため息をつくと、扉に付けられた鏡が曇る。
指先で拭うと、冴えないアラサー女が困り顔でこちらを見ていた。

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