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初音さんの二十日間
第9章 闘え!アラサー女!
「リスクに備えてスキルアップしとくか、お局扱いされても耐える根性をつけとくか。その辺の覚悟は必要じゃない」

ぬるくなった焼酎は甘い香りが消え、中途半端に薄いアルコールは、かえって酔いを覚ましていくようだ。

「いずれにしても不安定な関係ならば、若くてピチピチしたイケメンを取るので大正解。渋柿に比べたらリターンの可能性は大きいからね。がんばれ初音!」

……夏希の言うことは至極もっともで。
けど、見返りを求めてとかそういうことではないんだけれども。

心が動いちゃったんだもの。
その先に何が待っているのかなんて考えていなかったよ。

「おや、なにか言いたそうじゃない?」

「いや、ぐうの音も出ないってのを体感してる」

「ふふっ、キツいこと言っちゃったけどさ、あの子本当にいい子だよ。アラサーだろうと局だろうときっと大事にしてくれると思う」

「うん」

「そういう子に、今の彼女より初音の方がいいと思わせなきゃいけないわけだ。世話焼きおかんをやってる場合じゃないよ」

「う、うん」

「しっかり女を磨きなはれ」

「御意」

魑魅魍魎がうごめく世界で毎日が戦闘態勢の夏希には、私のようにふわふわした人間は頼りなく馬鹿に見えるんだろうなぁ。


お湯割はやめてキリリとロックを注文した。
夏希に負けないように。
おかんを卒業するために。

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