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純の恋人
第5章 三人の正体
はっきりしたのは、これがデビューシングルのPVだという事。私はCDも持っていたし、この映像も見たんだろう。
「マスカレードって、どんなバンドなんですか?」
松永さんが関わっているのなら、多分このバンドは私の記憶にとって重大なピースだ。私が訊ねると、国重さんは苦い顔をした。
「流行りものには興味がないから、詳しくは知らん。だが、顔出しNGビジュアル系バンドという売りで、若者に人気があったらしいな」
ビジュアル系バンドなのに、顔出しNG。矛盾した方針に、私は首を傾げる。国重さんもその辺りは疎いんだろう、続きの説明はなかった。
「顔を隠していた男が仮面を外したら、あの通りの色男だ。しかもエリート大学出とくれば、マスコミも放っておかない。松永は連日ニュースに取り上げられて、今じゃ当選確実とも言われている」
「ちょっと待ってください、松永さんが当選したら、お父さんは……」
「知事は一人だ、当たり前だが落選となる。つまりお前は、父親の敵と親しくしていたって事だ」
バラバラになっていたピースが、細い糸で繋がり始める。父と、謎の三人。無関係でないのは確かだった。