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純の恋人
第6章 マスカレード
でも、私の心に生まれたのは戸惑い。『警察は何もしてくれなかった』と語った私が、記憶にいたのだ。
「警察は……私の訴えを、無視したんですか?」
私が訊ねれば、国重さんは目を見開き私の両肩を掴む。
「お前……思い出したのか!?」
「断片的ですけど……部屋で、田中さんと話してる過去を思い出しました。その時、警察は何もしてくれなかったって話してて……」
「思い出したのは、それだけか?」
警察の対応が関わっているせいだろうか、国重さんからのプレッシャーがいつもより重い。掴まれた肩が痛くて、私は唇を噛んでしまう。
「あと、盗聴器と犯人からの手紙があった事も思い出しました。それが今、どこにあるのかは分かりませんが」
「本当にそれだけか? 後は何も思い出してないんだな?」
国重さんはしつこいくらいに聞き返して、溜め息を漏らす。なんだろう、この緊張感。国重さんが何にこだわっているかが、私にはいまいち分からなかった。
「警察の対応が遅れた事は、すまないと思っている。だが、今不信を持たれたら困るんだ。事件を解決するまでは、怒りを我慢してくれ」