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純の恋人
第6章 マスカレード
「私、怒ってなんかいませんよ? 戸惑いはしましたけど……警察の体制は、国重さん一人の責任ではないでしょう? 国重さんが事件のために色々犠牲にしてるの知ってますから、怒るなんて出来ません」
私はフォローするけれど、国重さんは沈んだ様子で目も合わせてくれない。こんなに気にするなら、いっそ何も言わなかった方がよかったかも。
「あの……すいません」
「なんでお前が謝る? やめてくれ」
この重苦しい空気、どうしたらいいんだろう。言葉が見つからず悩んでいると、付けっぱなしになっていたテレビから大きな音が響いた。
固いニュースは終わって、始まったのは地元の美味しいラーメン屋さんの特集。熱々のラーメンが目に入ったせいか、私のお腹が大きく鳴ってしまった。
「……緊張感のない奴だな、お前は」
「だ、だって、お腹が減るのは人間の摂理でしょう!? ちょっと早いかもしれませんが、夕食時です!」
恥ずかしくて、私はつい無意味に声を荒げてしまう。けれどそれは、国重さんの緊張の糸も切ったようだった。
「せっかくだ、何か奢ってやる。食いに出るぞ」