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純の恋人
第6章 マスカレード
忘れるとは、何をだろう。私が首を傾げると、国重さんは溜め息を漏らす。
「本物のストーカーが、奴を見たらどう思う? お前じゃなくて、奴が狙われる可能性もあるんだぞ」
「あ……」
イドさんがいてくれる安心感に甘えていて、私はすっかり失念していた。ストーカーがいるなら、その狂気が私以外の人間へ向くかもしれないという危険に。
「別に一切会うなとまでは言わんが、人目もはばからずにいたら危ないぞ。彼氏に気を遣いすぎて、かえってストーカーを逆上させたら本末転倒だ」
私がイドさんを大事に思えば思うほど、きっとストーカーは面白くないだろう。退院したらデート、なんて想像もしていたけれど、それはあまりにも軽率だ。
「もちろん、またお前が狙われる可能性もある。そこで、俺の出番だ」
「出番って……?」
「俺がお前の護衛としてそばにいれば、ストーカーが勘違いして行動を起こすかもしれないだろう。そしたら現行犯逮捕できる。つまりは、護衛兼囮って訳だ」
「でもそれじゃ、国重さんが危ないじゃないですか」
「本物の彼氏を危険に晒すわけにはいかないだろ。第一この事件は警察として動けないんだ、多少のリスクは仕方ない」