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純の恋人
第6章 マスカレード
確かにイドさんを巻き込みたくはないけれど、国重さんならいいだろうと言うのも違うような気がする。でも国重さんの考えを超える名案は思い浮かばなくて、頷くしかなかった。
「外に出るのも、捜査の一環だ。腹の虫が暴れる前に、行くぞ」
「……私、そんな腹ペコ魔獣じゃありません」
否定したその先から、また鳴り始める腹の音。国重さんはにやつく口元を隠しながら、テレビを消した。
黒ずんだ木目のテーブルに置かれたのは、透き通った黄金色のスープに浸かった縮れ麺。緑が鮮やかな野菜ともやしの組み合わせは、よだれを誘う。
「美味しそう……」
一口スープを飲めば、広がる塩の旨み。幸せを噛みしめていると、ふと向かいに座った国重さんが目に映る。眼鏡が曇って真っ白になった国重さんは、食べ辛そうにしながらも勢いよく麺を啜っていた。
「眼鏡外したらいいんじゃないですか?」
「いや、外したら何も見えなくなるからいい」
私は視力に問題はないので、眼鏡の人の苦労は分からない。近眼の大変さを思いながら、私は箸を握った。