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純の恋人
第6章 マスカレード
「い……嫌です、警察は、絶対……!」
体が震えて、私は自分の体を抱きすくめる。声を掛けてくれたホストらしき男性は訝しげに首を傾げていたが、すぐに私から視線を外した。
「そうですか、ではお大事に」
夜の世界では、こんな事日常茶飯事なんだろう。通行人は、何事もなかったかのように歩いていく。私も震える足を叩くと、再び歩き始めた。
警察には、行けない。頼れるのは、病院だけだ。早く処置しないと、変質者の子を身ごもってしまうかもしれない。病院だけが、私の希望だった。
まだ眠る街に、車のエンジン音が響く。私の後方から来ていたから、全く気が付かなかった。その車が、車道を外れ歩道に向かっていた事を。
ブレーキ音に驚いて振り向いた瞬間、私の体は宙に跳ね飛ばされる。
――こんな死に方したら、カナが後悔する。ごめんね、カナ――
頭に過ぎる名前は、地面に叩きつけられた瞬間に飛び散る。
「いやああぁぁーっ!!」
真っ赤に染まる景色の恐怖に叫び、目を背ければ、私は辛い記憶から現実の世界へと戻っていた。
「おい、大丈夫か!?」
「――はぁっ、はぁ……く、国重、さん……」