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純の恋人
第6章 マスカレード
 
 国重さんが運んでくれたのか、私は自分のベッドの上で寝ていた。額には、冷えた濡れタオル。これも、国重さんがしてくれたんだろうか。

「国重さん……」

 なんでこんな記憶、思い出してしまったんだろう。怪我はもう治っているのに、全身がひりひりする。痛い、苦しい、潰れてしまいそうだ。

「な、泣くなおい! どこか痛むのか? 救急車呼ぶか?」

 国重さんは狼狽して、電話を手に取る。私は首を横に振って止めると、国重さんに手を伸ばした。

「助けて……」

「――当たり前だ、俺はお前を助けるためにここまで来たんだ。必ず助ける」

 私の情けない手をしっかり握ってくれる。国重さんの大きな手。寒くてたまらない今、その人肌が恋しい。

 ――そうだ……私、ずっと誰かに頼りたかったんだ。一人じゃ怖くて、誰も彼もを疑わなきゃいけないのが辛くて、信頼できる誰かに、縋りたかった。

 事故の前にそんな人がいたら、こんな事にはならなかったのに――

 安心した私は、心地良い温かさにまどろむ。冷たい人、初めはそんな印象だったけれど、国重さんは私が眠るその時まで、ずっと手を握っていてくれた。
 
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