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純の恋人
第6章 マスカレード
 
「何か、思い出したんだろう? それも、あまり歓迎出来ない記憶を。倒れている間、ずっとうなされていたぞ」

「はい。事故に遭った時の記憶、思い出しました」

 出来るなら、誰にも話さず忘れてしまいたい。だから私は、忘れてしまったのかもしれない。でも、国重さんならきっと受け止めて、真実の解明に繋げてくれるはず。私は深呼吸して、なぞるのも嫌な記憶を口にした。

「あの日の前の夜、私……誰かに、強姦されたみたいでした。ボロボロの格好で、病院まで向かおうと歩いていたんです」

「ちょっと待て、強姦ってどういう事だ。警察では、そんな報告受けていないぞ」

「それは、お父さんが揉み消したからじゃないんですか?」

「違う。事故の後に行われた緊急手術の時点で、まだ通達はなかった。そして手術をしたなら、医師が強姦の痕跡に気が付かないはずがない」

「つまり、強姦の事実を隠したのは、病院だったと?」

 私は既に意識を失っているから、私が警察に話すなと止めたとは考えにくい。第一、まともな医者なら止められたって通報するだろう。なのに、なぜ隠したのか。全く分からなかった。
 
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