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純の恋人
第6章 マスカレード
関係があるなら、警察に行けなんて心配しないはずだ。私が事故に遭った後通報しなかったのは、それこそ自分が暴力団関係者だから。一文字、という人は、間違いなく加害者側の人間ではない。
「私、お姉ちゃん達の話を聞き終わったら、その一文字さんに会いに行きたいです。直接話を聞けば、何か分かるかもしれません」
「ばっ……何言ってやがる、あいつはヤクザ、しかも若頭だ! 話があるなら吉行に探らせる、危険な真似はよせ」
国重さんが止めるのはもっともだけれど、彼は少なくとも私を心配して声を掛けるくらいの良心はある。誰彼構わず脅しをかけるようなヤクザではないんだろう。だとすれば、踏み込まなきゃ何も変えられない。
「私は、助けてもらったお礼に伺うだけです。危険じゃありません」
「屁理屈を言うな。善人の振りをして近付いてくる輩が、今の時代一番危ないんだぞ」
「だって、真実をちゃんと知りたいんです! 分からないまま、怯えて眠る毎日なんて、過ごしたくないんです」
私の訴えに、国重さんは黙り込む。そして大きな溜め息を吐くと、繋いだ手を離した。