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純の恋人
第7章 真実の破片
言われてしまえば、反論は出来ない。けれどそれじゃ何にも信じられないじゃないか。そんな疑問が顔に出ていたらしく、国重さんは溜め息を漏らした。
「だから、裏付けが必要なんだ。事故の日については、マンションの住人へ聞き込みする。マスカレードの件は、昨日話した通り事務所へ聞けばいい。そう難しい証明じゃない」
私個人としては、松永さんが嘘を吐いているとは思わない。けれど思い出せない以上は、仕方ない。
「今は、一文字組への聞き込みが優先だな。日の出る内に行かないと危ない、早く終わらせるぞ」
事故の目撃者であるという若頭。私では分かりようのない裏の世界も、彼なら分かるかもしれない。もっとも、それを親切に教えてくれるとは限らないけれど。
太陽は、まだ空の中心でさんさんと輝いている。国重さんと共に、私は一文字組へと向かった。
国重さんいわく、若頭は昼間なら、まだ安全な企業のビルの中で働いている事が多いらしい。謝礼のお菓子を買い、連れられた先は、私が予想したよりもずっと高く、規模の大きいビルだった。
そんな所へアポもなしに入れるのかと思ったけれど、受付へ話をすれば、あっさり通してくれた。