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純の恋人
第7章 真実の破片
これからの人生、どうやって生きていくのか。歌を歌うのは、確かに選択肢の一つである。私に記憶はないけれど、そうやって生計を立てていた時期がある以上、いいえとは言い切れない。
「人気絶頂の中活動休止、実質解散したバンドのボーカルが素顔を解禁し活動再開したら、とても話題になるでしょう。あなたが歌うと言えば、多額の金が動きます」
「それで若頭さんには、メリットがあるんですか……?」
「今のままではありませんね。むしろ狩野組に資金が流れて、とても迷惑します。ですから、取り引きしましょう。僕はあなたの事務所を狩野組から買収し、裏付けを取らせます。その報酬として、歌っていただけませんか?」
「……もし、嫌だと言えば?」
「それは先程言った通り、そのまま活動再開されては困りますので、全力で邪魔をさせていただきます。芸能界へ戻るつもりがないなら、それでも構わないでしょうが」
とどのつまり、これは脅迫だ。協力と引き換えに歌う未来を選ぶか、平穏と引き換えに歌を捨てるか。記憶の件を抜きにしても、もう私は若頭に目を付けられている。若頭を通さない限り、もう歌う未来はないだろう。