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純の恋人
第8章 不信
「あの、アンジュさーん。確かここに、イドだかなんだかって奴がいるんじゃ」
「……部屋が変わったのかもしれません。具合が悪くなって個室に移動とか。ちょっと看護師さんに聞いてきます」
「ちょっと、待つっス! やっぱりそいつ、怪しくないっスか!? 近付くにしても、作戦会議した方がいいっス!」
成実さんは私の腕を掴み、首をぶんぶん横に振る。けれど、時は既に遅かった。
「あんた、オレの彼女に何してんの?」
病衣と、病院には似合わないピンクの髪。私を掴む成実さんの手を掴んだのは間違いようがなく、イドさんだった。
「ああ? テメェ、やぶからぼうになんだよ」
「な、成実さん!」
成実さんはやっぱりヤクザなのか、ちょっとの敵意にも睨みを利かせる。私は慌てて間に入ると、とっさに出任せを口にした。
「この人は、いとこなんです! 昨日の今日で大変だからって、送ってくれたんです!」
「いとこ……にしては、あんまり親戚って感じじゃないんだけど。また変な奴に騙されてない?」
「大丈夫、大丈夫です! お父さんも知ってる人ですから!」