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純の恋人
第8章 不信
イドさんは訝しみながらも、渋々頷く。なんとか火を見ずに済んで、私は胸を撫で下ろした。
「それで純ちゃん、オレのお見舞いに来てくれたの? ごめん、びっくりしたでしょ? なんか色々あって病室変わっちゃってさ」
「はい、びっくりしました。今ちょうど、看護師さんに聞いてこようと思っていたんです」
「そっか、行き違いにならなくてよかった。こんなところで立ち話してると怒られるし、談話室に行こっか。新しい病室の人、オレがこんな頭してるってだけで目の敵にするし、うるさいんだよね」
すらすらと話すイドさん。それは、本当に本当の話なんだろうか。そんな風に疑ってしまう自分が、情けない。
「そうですね、病院に迷惑を掛けちゃいけませんから」
どう行動するにしても、まずは然るべき場所へ移動しなくては。病院が犯人と繋がっているとはいえ、入院している人達に罪はないのだから。けれど成実さんが一歩足を進めると、また不穏な影が落ちる。
「ちょっと待って。いとこさんは、適当なところで待っててくれません? 知らない人と一緒でもオレ困るし、話もしにくいし」