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純の恋人
第8章 不信
「そういう訳にはいかないっス。オレが命じられ――いや、頼まれたのは護衛っス。いかなる時も側について、守るのが仕事っス」
「純ちゃんを守るのは、彼氏のオレの役目です。大体病院の中で、そんな危ない事起こる訳ないじゃん」
何も知らないイドさんからすれば、成実さんの言葉が大げさに聞こえても無理はないだろう。そして成実さんを、面白く思わない事も。
「成実さん、私は一人で大丈夫ですから、ちょっと待っていてもらえますか?」
「いいや、それは無理っス。目を離せば、若にブッ殺されるっス」
けれど成実さんから見れば、イドさんは容疑者の一人。引く気はない。一度収まった不穏な空気が、また広がってきた。
どうしたら、この場を丸く収められるんだろう。イドさんの不信はもっともだし、成実さんも若頭の命令だから止まらないだろう。この場を切り抜けるには、私がなんとかするしかない。
(どうしよう、何とかしなきゃ。私がなんとかしないと――)
その時、目の前に走る砂嵐。国重さんはいないのに、記憶が私をいざなう。
けれど、今はタイミングがあまりにも悪い。こんな時なのに、私は立っていられなかった。