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純の恋人
第8章 不信
私には縁のない、夜の街。ちょっと強面の人や年を取った人も、若頭を見ると道を譲り頭を下げる。田中さんが働いているというホストクラブも同様で、何も言わないのに通してくれた。
着飾った男性の中、私は田中さんを探す。病院の中では軽そうで浮いていた金髪も、この中では埋もれてしまう。結局私が見つける前に、若頭が黒服のスタッフに訊ねてしまった。
「カナタを呼んでもらえますか?」
黒服が二つ返事をする内に、若頭は適当なソファに腰を掛ける。そして三分もしないうちに、そのテーブルへ一人の男性――田中さんが現れた。
「……純!」
田中さんは、私の顔を見るなり、踵を返し逃げ出してしまう。だが田中さんを連れてきた黒服の人が首根を掴むと、ソファに投げ込む。
「お前、どこへ行く気だ! この世界で今後も働きたいなら、オーナーには絶対逆らうな」
黒服は田中さんを逃がすまいと、厳しく叱りつける。それでも口を噛み苦々しい表情を浮かべる田中さんに、私は声を掛けた。
「ごめんなさい、田中さん……いえ、カナ」
「カナ……って、純、思い出したのか!?」