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純の恋人
第8章 不信
 
「はい。カナは、本当に私を心配してくれていた人です。一ヶ月警察に駆け込んだ時の事を思い出して、確信しました」

 カナは国重さんが私を門前払いした話を聞いていたから、病院であんなにも怒ったんだ。犯人だから怒って誤魔化した訳じゃない。

「カナ……本当の話を聞かせて。私が警察に見捨てられた後や、事故のあった日、何があったの? 私はそれを知りたくて、ここまで来たの」

 カナはその問いに顔を上げると、目を擦り涙を拭う。そしてうつむきながら、口を開いた。

「――純がストーカーに遭ってるって気付いたのは、本当に偶然だった。警察にはひどい事を言われて、真子さんや雅樹さんも時期が時期だし頼れないって……俺が助けなきゃ、って思ったんだ」

「カナは、私に俺のところに来いって言ったよね。私、カナのところでお世話になったの?」

「いいや、そこまで負担は掛けられないって、断られたよ。けど、本音はどうだったか分からない。俺の下心を察知して、予防したのかもしれない」

 不意にカナは顔を上げて、私に切ない目を向ける。それは、『私』を愛して止まない瞳だ。
 
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