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純の恋人
第8章 不信
 
 過去の私は、その目の真意に気付いていたんだろうか。何となくだけれど、気付いていなかったような気がする。私の鈍い態度も、今回の事件が起きた一端のような気がしていた。

「ストーカーにも警察にもはらわたが煮えくり返ったけど、正直純と一緒にいられるのは嬉しかった。日に日にそんな気持ちが積もっていって、俺はいつの間にか、純を助けるって本分を忘れてたんだ。事件の前の日、大学の帰りが遅くなった純を送ってる途中で、俺は馬鹿な事をした」

 事件の前の日の夜。まだ記憶が抜け落ちたそこには、忌まわしい事実が隠れている。馬鹿な事と言われて、私の心臓が震える。あの時私が受けたのは、強姦。すると気を遣ってくれたのか、若頭が立ち上がり、私とカナの間に割り込んで座った。

「愛情が暴走して、彼女を強姦したんですか?」

 若頭の厳しい口調に、カナは青ざめ首を横に振る。

「そこまではしてない! 俺はただ、純にキスしようとして……ちょっと待て、強姦って、まさか」

「彼女は前の日の夜、何者かに陵辱された挙げ句、病院送りにされたんです。となると、あなたは犯人ではないとしても、被害を広げた張本人かもしれませんね」
 
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