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純の恋人
第8章 不信
事故じゃなきゃ、とカナは病院で口走ったいたけれど、それは犯人だからじゃない。自分が目を離さなければと、後悔していたからだ。確かにそれは、逃げなのかもしれない。でも私のために、そこまで気を病んでほしくはない。今の私も、過去の私と気持ちは同じだった。
どうして、私の恋人だなんて嘘をついたのか。そんな馬鹿な質問は、出来なかった。代わりに若頭が、カナに訊ねる。
「あなた、事故の後彼女の部屋に入りませんでしたか? 実は事故後に、ストーカーの証拠が部屋から消えているんです。あなたはその行方を知りませんか?」
「いえ……知りません。大体、どうやって部屋まで入るんですか。俺は純の部屋の鍵も持ってないですし」
「それでは、もう一つ。宮城 昌哉は、あなたの目から見て不審ではありませんか?」
カナが犯人でないとすれば、恋人を名乗った三人で残るのは、宮城さんだけ。けれどカナは、問いに対して首を横に振った。
「あいつは馬鹿だけど、ストーカーとかひき逃げとか、そんな陰湿な事をする奴じゃないと思います。どっちかと言えば俺は、雅樹さんが怪しいと思います」