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純の恋人
第8章 不信
「松永 雅樹が? それはどうして」
「だって、雅樹さんは理由もないのに、純の恋人だなんて嘘をついたんです。ストーカーは純がアンジュだった事も知ってたし、雅樹さんなら条件に当てはまるなって」
松永さんが独自に捜査していた事を知らないカナが、松永さんを疑うのは仕方ない。けれどこれで、事件の手かがりはなくなってしまった。
「なるほど、そうですか。では後は、宮城から話を聞くしかないようですね」
若頭も頭打ちを感じたようで、頷くと携帯を手に取る。そして短い通話を終えると、私に笑顔を向けた。
「今、成実を呼びましたから、あなたは明日に向けて休んでください。そのまま護衛として置いて、明日宮城の元に向かわせましょう」
「護衛って、でも……」
「成実は多少頭が軽いですが、僕の意図に反するような馬鹿はしませんよ。しっかり躾はしています」
多分、嫌だと言っても聞かないだろうし、私を商品だと思っているうちは大丈夫だろう。あまり機嫌を損ねて怖い事を言われないうちに、私は頷いた。
「僕は、彼ともう少し話をします。ああ、ご心配なく、あなたとは無関係の別件ですからね」