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純の恋人
第9章 彼の本性
「大丈夫、オレは『おだてりゃ強い』と若からも賞賛される腕前っス! だから下手に後ろを見たり、バックミラーを確認せずに、前を見るっスよ」
おだてれば強い、が褒め言葉かどうかは疑問だけれど、とにかく自信たっぷりな笑顔に少し緊張は解ける。発進した車は、大分遠回りをして宮城さんの働く現場まで向かった。
私の記憶では何もなかった土地に、建てられようとしている誰かの住宅。ちょうど休憩中だった宮城さんは私の姿を見つけると、肩を震わせ逃げ出そうとする。
「おっと、そうはいかねっスよ!」
けれど成実さんが腕を掴み、簡単に確保してしまう。鮮やかな捕り物劇に、周りの大工さん達も拍手を贈った。
「なんだよお前、離せっ!」
「オレだってどうせ捕まえるなら、野郎より女の方がいいっスよ! でもしょうがないんス、それがアンジュさんの望みなんスから」
そして宮城さんの首根っこを掴むと、成実さんは周りの人達へにこやかに声を掛ける。
「ちょいとこの生意気坊主、借りるっスよ。そんなに長くは借りないっスから、ご安心を」
成実さんの朗らかさは、大工さん達のノリと合ったらしく、簡単に送り出してくれた。