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純の恋人
第9章 彼の本性
「じゃあ、もういい。私だって、これ以上身内を疑いたくないし……」
カナもミヤも犯人じゃないとすれば、犯人は誰なのか。そもそもストーカーとひき逃げ犯が同一人物なのかも、はっきりとは分からないままだ。私はどこへ行くともはっきりしないのに、とにかくここから離れたくて、空き地から歩道の方へと歩き出した。
「アンジュさん、どこに行くんスか――」
成実さんが慌てて後を追ってきた、その時。正面から、走ってくるスーツの男性が見えた。私はその姿に、見覚えがある。
「……国重さん」
何度もかきむしったのか、髪の毛は乱れている。息を荒げた彼は私の前で立ち止まると、僅かにずれた眼鏡を上げてから口を開いた。
「この、馬鹿が! なんで暴力団と手を組んだんだ、借りを作れば、お前は必ずつき纏われるんだぞ!」
怒鳴り声は、私の記憶をフラッシュバックさせる。助けを求めたのに、頭を下げさせられた悔しさ。手を振り払われた悲しさ。それは、私の目を曇らせ硬直させた。
「……なんだ、顔色が悪いな。大丈夫なのか、体調は――」
「ゃ……近付かないでっ!」