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純の恋人
第9章 彼の本性
イドさんは、まるで会話にならない返事をしながら私の頬を撫でる。下手な事を言えば、その手は私の首を絞めるかも。そう考えると、喉がカラカラに乾いた。
「イドさん……私、気になっていたんです。イドさんって、本名は何なんですか?」
暴力団と繋がりがあって、私の覚えていない事まで知っていた彼。きっと名前に……答えがある。
「そうだね、一緒に暮らすのに、本名も知らないんじゃ困るよね。イドさんって呼ばれるのも嫌じゃないけど、オレも純ちゃんには本名で呼んでほしいし」
やっぱりどこかずれた返事をすると、イドさんは笑顔で答える。
「土居 晴久。それが、オレの名前だよ」
「……土居を逆さから読むと、イドですね」
「とっさに名前なんか出なくてさ。カナタから発想パクっちゃった」
あの病院の名前は、土居記念病院。きっとイドさんは――土居 晴久は、あの病院の深い関係者なんだ。年齢からすると、院長の息子とかかもしれない。それなら、全ての説明がつく。私が事故の後ここへ運ばれたのも、父が指示する前から強姦の事実を揉み消したのも。