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純の恋人
第9章 彼の本性
「イドさ……いや、晴久さん。私とあなたは、病院が初対面じゃないですよね」
「うん。ごめんね、オレ嘘ばっかりだね。でもさ、分かってくれるよね? オレは自分の欲の為じゃなくて、全部純ちゃんのためにしたんだよ」
「どこで、私を知ったんですか?」
叫んで、喚きたい気持ちを抑えて、私は訊ねる。すると晴久さんは、子どもみたいに胸を躍らせながら語り始めた。
「初めて会ったのは、ライブの時だよ。オレ、その頃受験勉強が上手くいかなくて自暴自棄で……現実逃避して向かったライブ会場で、たまたま見かけたんだ」
「そこで、私がアンジュとして歌っていたんですか?」
晴久さんは頷くけれど、普通、それを人は「出会い」とは言わない。晴久さんから見れば私は一人かもしれないけれど、私からすれば彼は客の一人だ。私が彼を認識していたとは、とても考えられなかった。
「その時は顔まで分からなかったけど、一目惚れしたんだ。足上げた時、太ももにオレと同じ位置にほくろあるの見てさ、これは運命だって思ったんだ」
確かに、同じ位置にほくろがあったのは事実だ。でも、それは運命じゃない、偶然だ。