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純の恋人
第9章 彼の本性
もう何が何だか分からなくて、私は凍り付く背中に任せて泣き喚く。すると晴久さんは私の首を掴み、喚く私を締めて黙らせた。
「はっ、う……んんっ」
「どうして、なんでそんな酷い事言うの! 純ちゃんはいつもそうだ、なんでオレを、化け物を見るような目で見るの!?」
息が出来ない。視界がぼやけて、暴れる足にも力が入らなくなる。
「……もう一度、忘れればいいのかな」
途切れる意識が拾ったのは、呟きだった。
「また忘れても、純ちゃんはオレを選んでくれるよね?」
首から手を離されたのも僅か、私が空気を吸い込む間もないうちに、頭に衝撃が走る。
そうだ、晴久さんに殴られたのは、初めてじゃない。私あの時にも、暴力を振るわれている。
私の記憶を失わせようと振るわれた拳は、私の鍵を全て解き放つ。けれど膨大な記憶が手を伸ばしてきても、私の意識はそれを受け取る前に沈んでしまった。
殴られた衝撃で、私は地面に尻餅を付いてしまう。公園の植え込みは、座ってしまえば私を簡単に隠してしまう。もっとも、隠さなくても、こんな夜中に公園の奥へ足を運ぶ人間なんかいないだろうけれど。