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純の恋人
第11章 過去から、未来へ
若頭は約束通り私の所属事務所を狩野組から買収して、傘下に入れた。とはいえ、しばらく声を使っていなかった私が、すぐに復帰出来るはずがない。私と同様に、若頭がスカウトしたカナの復帰もある。二人が同時に復帰すると話題が薄れるから、まずはカナを先にして、それからカナとのコラボで私を復帰させるらしい。
一番忘れたかった記憶が解き放たれた今、大体の記憶は蘇っていた。私が歌をどれだけ好きだったかも、どんな努力をしていたかも……若頭の口車に乗せられる形ではあったけれど、歌の道を捨てないでよかったと、今は思う。
「ああ、今からアンジュの再デビューが楽しみっス。応援してるっスよ!」
成実さんは私のSPとして、いつも一緒に行動している。今は平穏でも、いつ狙われるか分からないからって。晴久さんだって、保釈されれば表には出られるし。
保釈されたとしても、さすがにまた犯罪を犯すような事はないだろうし、反省していると信じたい。晴久さんの中には、私が好きになったイドさんがいるのも事実なんだから。どこかが――初めが間違っていなければ、私の人生も変わっていたのかもしれない。