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純の恋人
第11章 過去から、未来へ
 
 でも、過去を見ても、過去は変わらない。間違いは消えないし、逃げても誤魔化しても体の傷は消しても、心は全てを記憶している。

 変えられるのは、未来だけ。過ちを受け止め乗り越えようとする姿勢が、人を変えるんだと思う。

「成実さん、今日はボイストレーニングが終わったら、国重さんとラーメンを食べに行く約束をしているんです。なので、今日はここで解散で大丈夫ですよ」

「あの刑事と?」

 国重さんの名前を出すと、成実さんの眉間にシワが出来る。どうやら私が狩野組に攫われた後、成実さんは若頭からかなり厳しく叱られたらしい。そのせいか、成実さんの仕事の邪魔になってしまった国重さんは好きじゃないようだ。まあ、因縁を抜きにしても、刑事と暴力団なんだから犬猿の仲なんだろうけど。

「アンジュさん、悪い事は言わねっスが、あの男はやめた方がいいっス。気は利かなそうだし、頭も固そう、絶対息が詰まるし、スキャンダルも怖いっスよ。どうせならオレみたいな頼りがいのある男が――」

 その時、机に置いていた私の携帯が着信を告げて震える。申し訳ないけれど、私は携帯を手に取った。
 
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