この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
純の恋人
第2章 三人の男
「……ありがとうございます。でも、私分からないんです」
「分からないって、何が?」
「あれが私にとって普通の事なのか、そうでないのか」
彼は目を丸くして、首を傾げる。私にだって分からないんだから、彼が不思議がるのは当然だ。見ず知らずの私を心配してくれる彼の優しさに、私は自然と口を動かしていた。
「私、事故の影響で、数年前からの記憶が欠けてしまったんです。だから、その期間に出会った人とどんな関係かも分からなくて……今の私が嫌だと感じても、本来の私はそれが普通だったかもしれないんです」
「でも、今嫌なら嫌って言っていいじゃん。それって、嘘吐かれてても分からないんでしょ? 騙されてる可能性だってあるじゃん」
彼の言葉に、私は反論出来ない。そして、首を縦に振る事も出来ない。
「……それでも、本当の可能性があるなら、私は彼を拒絶出来ません」
それが本当の「私」だと言うならば、私は受け入れざるを得ない。記憶を取り戻さなければ、私はただの欠陥品なんだから。
「そんなの……」
彼が言いたい事を飲み込んだのは、彼もまた複雑な事情を抱えているからだろう。