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純の恋人
第2章 三人の男
三人目の彼、田中 翔さんが来るのはいつも午後からだ。口に出して聞いてみた事はないけれど、多分彼は夜の仕事――ホストか何かなんだと思う。病院内ではマナー違反になるけれど、見舞い中何回か電話やメールで席を立つ事がある。私も、連絡を取る女の一人だったのかもしれない。
「ごめん、純。ちょっと待ってて」
渋い顔をしながら、一度部屋を出て行く田中さん。私はその背中を見送りながら、退院後の身の振り方を考えていた。
両親は、私が実家に戻る事を良しとしていないらしい。なんでも今議員の選挙があって、父がそれに立候補しているのだとか。私の事が知られたら面倒だから、隠しておきたいんだろう。
ひとまず一人暮らししていたマンションに戻るとして、それからどうするか。全くビジョンが浮かんでこない。ずっとこのまま欠けて不完全なままでいるのかと思うと、背筋が寒くなった。
「――純」
するといつの間に戻ってきたのか、田中さんが私の背中をさする。何も言わないのに、彼は私の不安をいつも察してくれる。人を観察する力に長けた人なんだろう。