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純の恋人
第1章 欠陥品の彼女
「申し訳ありませんが、まったく見覚えがありません」
「そっか。いや、いいんだ。こうして二人でいれば、きっとすぐ思い出すよ。そしたら、純が誰のものなのかも、はっきりするだろうし」
寂しげな表情を浮かべる彼について私が知っているのは名前と、私と同じ二十三歳である事だけ。ああそれと、女の人にモテそうなイケメンだって事も、見れば分かる。金髪にジャラジャラピアスをつけたその見た目は、いかにも遊んでいそうだし。実際彼を見かけた看護師さんは、見とれてうっとりしていた。
「田中さん、今日はわざわざ見舞いに来てくださってありがとうございます。しかし、もうすぐ看護師さんがいらっしゃる時間なので、今日はそろそろお帰りいただいてもよろしいでしょうか」
「うん……また来る」
彼はすっかり大人しくなった陰茎をしまうと、ベッドから下りる。そして私が病衣を身に着けたのを確認すると、仕切りのカーテンを開いた。
ここは四人部屋だけど、隣と、斜め向かいには誰もいない。綺麗に畳まれた布団が、シーツの上に乗っていた。
そして向かいには、閉められたカーテン。私はその頼りないプライベートルームが開かれているのを、一度も見た事がなかった。