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純の恋人
第3章 刑事 国重一
刑事さんを締め上げると、坂本さんは子どもを宥めるように声を掛ける。安心させようとしてくれる気持ちは伝わったけれど手足の震えは止まらない。目の前が真っ暗で、底なし沼に沈んだようだった。
「本当にごめんなさいね、まだ混乱する事も多いでしょうに、いきなりこんな事。でもね、色々怪しい事があるのも事実なんです」
優しいを通り越し、女性みたいな言葉遣いになっている坂本さんは、眉を下げながらも話を続ける。
「覚えてませんか?あなた、事故に遭う一カ月程前に、一度警察を訪れているんです」
「私が、警察に……?」
「あなたはストーカー被害を訴えていて、どうやらその後も被害は続いていたようなんです。あなたの近辺には、トラブルが間違いなくあったんですよ」
そんな事、全く覚えていない。両親や姉、見舞いに訪れる三人からも話を聞いた事はない。彼らはストーカー被害を知らなかったのか、あるいは隠していたのか。私には、分からなかった。
「決定的なのは、あなたを轢いた車のその後。はっきり言うとね、事故の犯人は、ひき逃げしているんです」
「嘘、そんな!?」