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純の恋人
第3章 刑事 国重一
「本来は、あなたに事件の事を訊ねるのも禁止なんです。だから今日私達が訪れたのも、あくまで『暴力団同士のトラブル』についての聞き込みという名義です。人に聞かれたら、そういう事にしておいてください」
「坂本さん達は、事件を捜査してくれるんですか……?」
「私は、彼に協力しただけです。一番にこの事件を解決したいと思っているのは、こいつ――一(はじめ)ですよ」
そう言って、坂本さんは隣の刑事を指差す。この部屋に来てから、ずっと眉間に皺を寄せていて、近寄りがたいこの刑事さん。この人が率先してここに来たとは、あまり思えなかった。
「事件が隠蔽されて以来、一はずっと上に訴えてきました。残念ながら、それが通る事はありませんでしたが。痺れを切らした一は、警察官としてではなく個人として捜査すると言い出して、私に協力を要請してきたんです」
「じゃあ、この刑事さんは」
「今日は非番です。プライベートの時間を、あなたの捜査に回すつもりで来ています」
眼鏡の奥にある瞳はとても冷たそうだけれど、本当はすごく熱血な刑事なのかもしれない。私がつい見つめていると、刑事さんは頭を掻きむしった。