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純の恋人
第3章 刑事 国重一
その途端、場を支配する沈黙。聞きたい事があれば、なんて坂本さんは言ったけれど、威圧するような目をしてこちらを見てくる国重さんに何かを訊ねるのは、正直怖かった。
「……当面お前が警戒するべき事は、三つだ」
私が何も言えずにいると、国重さんが否応がなしに場をピリピリさせる声で話し出す。
「まずはストーカー、そして暴力団、最後は父親の関係者。ひき逃げ犯はこれらに関わる人間の可能性が高い。なるべく近寄るな」
「そうは言われましても、暴力団はともかく、ストーカーは誰かも分かりませんし、どうしてお父さんの関係者まで疑わなければならないんですか」
「娘がひき逃げされて隠蔽する親がどこにいる? もしかすると吉川は、犯人に心当たりがあるのかもしれない。そして犯人が公になれば困ると知っているから、隠蔽した可能性だってあるぞ」
それが真実なら、父が共犯者と言ってもおかしくはない。そもそも父が事件を隠蔽したという事実だけで、私が父に愛されていないのは確かだった。父は私より、選挙の方が大事。それを思うと、胸がずきりと痛んだ。