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純の恋人
第3章 刑事 国重一
自分の言いたい事だけ言うと、国重さんは帰ってしまう。私の話を聞こうという様子は、結局最後まで見せてくれなかった。
「なんなの、あの人……」
大事なのは本当に事件だけで、誰かを気遣う気持ちなんてないんだろう。刑事としては間違っていないのかもしれないけれど、私の心に残るのは重苦しさだけだった。
私だって、こんな風になりたくてなった訳じゃない。一人になったら耐えられなくて、我慢していた涙がこぼれた。
涙がこぼれても、拭ってくれる人は誰もいない。落ちた涙は制服のブレザーに滲む。私の前に立っているのは……宮城さん? ああそうだ、この制服。私が通っていた高校の制服だ。
「泣くほど悔しいなら、ちゃんと話せよ」
誰も残っていない、夕日が差し込む放課後の教室。真剣に私を叱る宮城さんは、いつもの軽い彼とは違う。私……知らなかった。宮城さんが、こんな真面目に私の事を考えてくれてたなんて。
「絶対に分かり合えるなんて言えねーけど……話せば、分かってくれる事もあるかもしれねーだろ!? 何もしてないうちに諦めるなんて、そんなのおかしいだろ!」