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純の恋人
第4章 そして誰もいなくなった
「――い、おい、大丈夫か!?」
呪いが解けたかのように、視界が鮮明に戻る。国重さんは私の肩を揺さぶり、慌てた声で呼び掛けていた。私が顔を上げると、深い溜め息を吐いてもう一度訊ねる。
「……大丈夫か?」
「は、はい」
「頭が痛いのか? 事故の後遺症が残っているなら、退院どころじゃないだろう」
「いえ、今の頭痛は、多分……」
私は今思い出した記憶と、昨日の事を話してみる。すると国重さんは私の肩を叩き、力強く頷いた。
「なんだお前、ちゃんと記憶思い出してるじゃないか。それならそうと言えば良かっただろう」
「え? でも、事件とはなんの関係もない記憶ですよ。役には立たないじゃないですか」
「役に立たない訳がないだろう。他人から『お前はそうだった』と言われた事は、こちらが本当か嘘か検証しなきゃ信用できない。だがお前の記憶は、誰かの思惑や主観の入らない純粋な真実だ。信じて問題のない話は、事件解決の進展に繋がる」
国重さんは鼻の頭を掻き、そっぽを向く。そして顔を赤くして、ぽつりと呟いた。
「まあ、なんだ……よくやった」