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純の恋人
第4章 そして誰もいなくなった
「今日無理なら、明日でもいい。三人に、揺さぶりをかけてみろ」
国重さんは私の奥に潜む欲望には気付かなかったようで、すぐに手を離し本題へ戻してしまう。気持ちいいからもっと触っていてほしかったなんて、とても言えない。そんな私を、国重さんは嫌っているのだから。言葉に頷き、同意するしかなかった。
「友人から、自分の事故は事件だったかもしれないと噂を聞いた――そう話してみろ。ストーカーの事や、父親の事は言わなくてもいい。あまり深く突っ込むと、逆上しかねないからな。本物の恋人なら頼りがいのある返事もするだろうが、偽物ならどこかボロが出るはずだ」
「分かりました。やってみます」
「勇ましい返事は有り難いが、体調には気を付けろ。倒れられたら、捜査にも影響するからな」
素直に心配だと言えないのが、国重さんという人なんだろう。朝、顔を合わせた時は苦手だと思ったのに、嫌いにはなれない。胸の奥から湧いてくる不思議な感情は、不思議と心地が良かった。
けれど、あまり浸ってもいられない。私がやらなきゃいけないのは、大事な捜査だ。もうすぐ来る松永さんを迎えるため、私は深呼吸し、気合いを入れた。