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純の恋人
第4章 そして誰もいなくなった
 






 松永さんは話しやすい人だし、探りを入れるのもそれほど難しくはない。お見舞いのクッキーを食べながら、私は国重さんの指示通り話を切り出してみた。

「松永さん、そういえば、昨日お見舞いに来てくれた友達から、少し妙な噂を聞いたんです」

「友達って……翔や昌也じゃない人?」

「は、はい。その人が言うには、私の事故は、事故じゃなかったかもしれないって」

 すると、今までずっと大人の余裕を見せてきた松永さんに、初めて曇りが見える。息を飲み、何か色々と思案した後、ようやく私に言葉を返した。

「誰から、その話を聞いたんだ? その人間の名前を教えてくれないか」

「名前って……どうしてですか?」

「そんな噂、嘘にしろ本当にしろ、無責任に漏らすものじゃないだろう。あまり負担になる事を話すものじゃないと、伝えなけりゃいけないと思ってな」

 松永さんの言葉は正論だ。何も知らないなら、憤慨してもおかしくはない。けれど一つだけ、腑に落ちない事があった。

「名前を聞いただけじゃ、どこの誰かは分からないんじゃないですか?」
 
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