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純の恋人
第4章 そして誰もいなくなった
「あの、宮城さん……私、話が」
そして案の定私の言葉は流され、病衣に手を掛けられた。駄目、このままじゃまた抱かれるだけで終わってしまう。どうしたらいいかと悩んでいると、眠っていた私の何かが声を上げた。
「待って、ミヤ!」
それは、記憶の中での宮城さんの呼び名。すると宮城さんは手を止め、私の両肩を掴む。
「純……俺の事、思い出したのか?」
「少しだけ……高校で、ミヤと一緒だった事とか」
宮城さんはその途端泣きそうなくらい安堵した表情で、私を抱きしめる。震える声はとても嘘とは思えない、真っ直ぐなものだった。
「良かった……ほんっとーに、良かった」
熱を帯びた交わりとは違う、温かなぬくもり。これが宮城さんの本質なんだろうか。だとすれば、どうして今まで見せてくれなかったんだろう。
「でも、まだ全部思い出した訳じゃないの。ミヤに諦めるなって叱られた事は思い出したんだけど、それがなんだったのかは分からない……多分それが私にとって、一番大事な事だったのに」
「うん。俺は知ってるよ。純がどれだけそれに命懸けてたか」