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純の恋人
第5章 三人の正体

けれど、結局この病室に、私とイドさん以外の入院患者がやってくる事はなかった。病院はベッド不足なんて騒がれているけれど、あるところにはあるんだろうか? それとも、私の認識はもう過去の事なのか。どの道去りゆく私にとって、それはもう関係のない話だった。
荷物は、お言葉に甘えてイドさんに持ってもらった。体調が心配だったけれど、今日のイドさんはすこぶる機嫌がいい。自動ドアを越えて外に出れば、日光がさんさんと降り注ぐ。日の光を浴びたイドさんは、血色もよく見えた。
入院中、まったく外に出なかった訳じゃない。病院の中庭や、裏の森に足を運んで恥ずかしい事もした。けれど、今日の空気は全然違う。
風が吹いて、穿いていた白いスカートが僅かにはためく。お姉ちゃんが用意してくれた私服は、やっぱりお姉ちゃん好みの清楚な服だった。流れる風も、同じ。清楚というか、真っ当というか、憑き物を落とすような風だった。
「あー、なんかシャバに出たって感じ? 外の空気、やっぱりいいな」
イドさんは、深呼吸し背を伸ばす。イドさんが今感じてる思いは、多分私と一緒。私より的確で正直な感性に、私は思わず笑みがこぼれてしまった。

