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純の恋人
第5章 三人の正体
 
 姉は頷くと、ようやく平静を取り戻したようだった。その後はぽつぽつと世間話を三人で話して、昼ご飯を食べて、何事もなく時間が過ぎていった。

「あ、いけない。私、戻らなきゃ」

 姉がそう声を上げたのは、一時を過ぎた辺りだった。姉はどこかの事務員をやっているらしく、今日は仕事を抜けて来てくれたのだそうだ。引き止める訳にもいかず、私は姉を送り出す。

「私は一人で大丈夫だから。お姉ちゃん、気を付けてね」

「純ちゃんはオレがきちんと面倒見ますんで、安心してくださいね」

「純、それにイド君もありがとう。じゃあ私、先に帰るわね」

 姉が出て行くのを見送ると、私はつい溜め息を吐いてしまう。イドさんはそんな私の肩に手を置くと、苦笑いした。

「お姉さん、いい人だけどちょっと天然だね。純ちゃんもどっか抜けてるし、お嬢様ってそんな感じなのかな」

「お嬢様じゃないですよ、私」

「お嬢様でしょ、お父さん偉い人だし、純ちゃんもこんないい所住んでるし。まあ、貧乏でも純ちゃんは純ちゃんだったろうけどさ」

 どんな環境でも、私は私。今の自分に自信が持てるイドさんの言葉は、魔法みたいだ。
 
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