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純の恋人
第5章 三人の正体
 
「……純ちゃんの初めては、オレだよ?」

 するとイドさんが、冗談なのか本気なのかいまいち分からない口調で、ぽつりと漏らす。

「純ちゃんが忘れちゃっただけで、オレだよ。オレは昔から、純ちゃんの事全部知ってる」

 病院で会った時には、初めましてって話したのに。イドさんの嘘は、優しくて温かかった。

「そうですね……そうだったら、よかった」

「あ、純ちゃん信じてない。ホントだよ? だって純ちゃん記憶ないんだから、否定できないでしょ?」

 イドさんは頬を膨らませ、私をじとりと睨む。子どもみたいな表情が可愛くて、私はつい笑ってしまった。

「純ちゃん。過去がどんなでも、変えようがない事を言ってもしょうがないじゃん。一番最初に会ったのがオレなら妬いちゃうけど、あの変な奴らは高校生からの知り合いな訳だし。ホントの初めてが誰でも、これからオレだけ見てくれればそれでいいよ。純ちゃんが、今まで会ったどの人よりオレに惹かれた、それって名誉でしょ?」

 イドさんのものが、再び私の中心に当てられる。イドさんの気持ちは、全く折れても萎んでもいない。熱いまま私に触れてくれる事が、とても嬉しかった。
 
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