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恋のたまご、割るのはダレ?
第2章 ブラックヒストリーというやつ



まあ、滑舌改善の為の朗読というのは建前で、ゆうみは単にラノベを声に出して読んでその世界に浸りたかったのだ。


でも、貴也はいつからか、BLに限らず朗読をするのを渋る様になっていた。


ゆうみもそれを感じ取ってはいたが、気付かぬ振りをして貴也に相手をしてもらっていた――貴也にすればさぞかし面倒な事だったろう。ゆうみも内心(悪いなあ)と少し思いながら、顔をひきつらせながらも本を読んでくれる貴也に甘えていた。

ゆうみは、貴也に朗読を頼む見返りとして、貴也の好物のレモンケーキをいつもふるまっていた。

マンションの近所の「コンジョー」というケーキ屋に売っている人気商品で、貴也が遊びに来たときにゆうみが食べさせてやったら、貴也は頬を紅潮させ、その美味しさに感激していた。ゆうみは、貴也はそんなにもこのおやつが大好きなのか、と思い、以来、何かと言うとレモンケーキを貴也に進呈している。
別名、賄賂ともいう。ゆうみがレモンケーキをあげる時は、貴也に頼み事がある時だから。

そのレモンケーキというのは、丸いフォルムだが完全な丸ではなく楕円形に近い。両端がすぼんだ形をしていて、つまりはレモンケーキだけに、レモンの形に見立てている。ほんのりとレモンの香りのするスポンジケーキの表面にレモンの果汁を混ぜたホワイトチョコをコーテイングしてあり、レモンの輪切りの形の砂糖菓子がちょこんと載っている可愛らしいケーキなのだ。




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