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愚者の唇
第1章 愚者の唇


あの時のめったに見られない焦った彼の姿と、叱られたくてわざとやった私を見下す冷たい目…。
後輩ができてもうっかり癖が治らない、天然OLの若い女の子に、立場ある大人の男がそこまで怒らずとも、と同情的な周囲の雰囲気…。


彼がいるときに許可のない自慰行為は許されないが、誰に邪魔されることなく触れていた、自分の指先が恋しい。

思い出すだけでよだれと愛液が滴る。






「ゴム」

まだまだ味わっていたいわがままな私は、一度、夢中になりすぎて聞こえない振りをした。
そうしたら、静かに怒りを含んだ拳で小突かれた。全てお見通しだ。


今日はおかしなことばかりだ。
台風が来て、来ないはずの彼が来て、使わないはずのコンドームを要求されたりする。


至急、私は立ち上がり、引き出しの中から取り出した可愛らしいゴムの袋を破き、急いでまた彼の足の間にひざまずいた。

これから私を犯す先端にゴムを乗せ、その愛しい形を確認しながらそおっと被せていく。
その硬さに、生唾を飲んだ。


「入れます」

急く気持ちを抑えられず、彼の首に腕を回し、彼の身体をまたいでから、気がついた。




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