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ただ一つの一対
第5章 花園の鍵は
 
「んっ……ぁっ」

 菊はロッカーに菖蒲を押し付け、獣のように口内を犯す。菖蒲は散々煽っておきながら、いざ牙を立てられるとたじろぎ固まってしまう。そんな初な反応も、菊の本能を刺激した。

 惜しげもなく晒された首筋を甘噛みすれば、菖蒲の体が跳ねる。強く吸えばぽつりと赤い跡がつき、無垢な少女を彩る。ジッパーを下ろせば、真っ白なTシャツに覆われた体が露わになった。

 だが菖蒲は、それを隠そうと腕を前に組んでしまう。菊はその手を取って開かせると、意地悪な笑みを浮かべた。

「今さら隠すとは、無粋ではありませんか?」

「違うの、だってあたしこんな格好で全然色気ないし、ホントはちゃんと色々用意してたのに」

「用意とは、何を?」

「可愛い服とか、化粧品とか……勝負下着とか」

 菖蒲は顔を真っ赤にしてうつむくが、密着した菊の視線からは逃れられない。菊はますます笑みを深めると、掴んだ手に指をそわそわ絡ませた。

「閉じてしまうなら、僕も手は離せませんね。しかしこれではあなたに触る事も出来ない。精々頬ずりするくらいでしょうか」
 
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