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ただ一つの一対
第5章 花園の鍵は
 
 菊は菖蒲の胸に顔を埋めると、子猫のように甘く縋る。まだTシャツやブラジャーに守られているとはいえ、敏感な場所への刺激に菖蒲は驚く。

「まっ……叔父さ、ぁんっ!」

 もどかしい刺激だけでなく、菊はTシャツを裾を噛んで持ち上げる。脇腹が僅かに空気に触れるが、頼りない空気では体の熱が収まりそうになかった。

「駄目ですね、手を使わないというのは、案外難しいものです」

 菊は口を離すと、あっさり菖蒲から手も離す。しかし今度の菖蒲は体を隠さず、自分からTシャツの裾を掴んだ。

「叔父さん……もういいから、ちゃんと触って」

 菖蒲はジャージとTシャツを脱ぎ捨てると、ブラのホックに手を掛ける。しかし菊は菖蒲を止めると、自身の手で最後の砦を破った。

 菊にとって女という生き物の体は、特に有り難みもなく見られるものである。たくさんの女が通り過ぎた瞳からすれば、菖蒲は特段女として体に優れている訳ではない。だがきめ細やかな肌も、小粒な胸の蕾も、百戦錬磨の女以上の興奮を菊に与えていた。

 手を伸ばせば、柔らかいが力に逆らい元の形に戻ろうとする張りのある感触が伝わる。
 
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