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ただ一つの一対
第5章 花園の鍵は

「では、菖蒲が僕を舐めてください。僕は今日一日手に汗握りながら応援しましたから、既に汗臭くなっているでしょうが、出来ますか?」
汗臭い、などと言うが、菖蒲がこれだけ密着しても菊に汗臭さなど欠片もない。菊がスーツやシャツのボタンを外し肌を晒せば、菖蒲は迷わず手を伸ばした。
細身ではあるが、薄い肉の内側にしっかりと筋肉のついた胸板。初めて触れる男性の体は、好奇心をくすぐる。自分との違いを探るように、全体を探っていく。
「なんか……不思議。男の人ってムキムキじゃなくても、こんなに違うんだね。そりゃ、力勝負になったら勝てないよ」
毎日稽古に励み筋量をつけた菖蒲でさえ、体には柔らかさが残っている。女の本気を簡単に超えられる男性という体を、菖蒲は羨ましく感じた。
「しかし、女性はその代わり人を育てる体を持っていますよ。柔らかな肌に包まれ抱かれて、赤子は大きくなるのですから」
不意に出てきた子どもの話に、菖蒲内心で焦る。だが、菊は菖蒲が事情を成実から聞いた事を知らない。特に何か不審がる事もなく、話を続けた。

