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ただ一つの一対
第5章 花園の鍵は

「大体、いつの間に鍵掛けたの? もう……寿命縮んだよ」
反省の色がまったく見られない菊に、菖蒲は溜め息を漏らす。だが一番呆れているのは、可愛らしいと言われて、怒りよりも喜びが勝ってしまった自分自身だった。
「まあ、こんな所ではろくに声も出せませんし、このくらいにしておきましょう」
「え? でも、あたし……最後まで、したいよ」
離れようとする菊のシャツの裾を掴めば、菊は菖蒲の額に口付ける。
「だからこそ、です。一生にただ一度の初めてが、こんな暗くて狭い場所では嫌でしょう」
「本当に、最後までしてくれる? 帰ったらごまかして、なかった事にしようなんて言わない?」
「ここまでしておいて、なかった事には出来ないでしょう。もう、一線は越えてしまっています。今さら引き返す事など、許されない」
「叔父さん……」
菊の瞳に残るのは、罪悪感。どんな言葉で言い繕っても、血縁だけは変えられない。菊が宗一郎に敬意を払っている事は、菖蒲もよく知っている。そんな菊を罪の世界に引き込んだのは、菖蒲である。
「……ごめんなさい、でも、私」

